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浄瑠璃時(九体寺)   

2011年 05月 21日

信楽から茶所和束を過ぎて、木津川沿いのJR関西本線加茂駅から、程近い静かな田舎道の先に、山懐に抱かれるように、浄瑠璃寺はあった。こじんまりとした、落ち着いた雰囲気のあるお寺で、東に薬師如来を祀る、朱色も鮮やかな国宝の三重塔があり、西に九体の国宝の阿弥陀如来像を安置する、これも国宝の阿弥陀堂が建つ。真ん中に小さな宝池があり、塔とお堂と池と山の木々がすべての世界である。京都や奈良の大伽藍や、広大な庭園と比べると、これだけか、というほどの小さな世界だが、そこには有名寺院では味わうことのできない、静かな、深い安らぎの世界がある。お寺を参拝する目的は、建築美、庭園の美、仏像の美を見に行くのだが、この浄瑠璃寺には、そうした美とは別の、心の世界がある。無宗教でとうしている私にも、極楽浄土への入り口が、このお寺には存在するのだと感じます。宝池をめぐる歩道を二人して歩くと、木々の間に三重塔の赤い色や、阿弥陀堂が見え隠れする。日々の生活に新鮮さを失い、生活習慣に流されるように毎日を過ごしていると、サワサワとゆれる木の葉の揺らぎや、チラチラと目に入る池の反射光が、私を別の世界へ迷い込ませる。人生とは何だろう、家族とは、愛するとは、哲学の道ではないが、小さな池のほとりを歩きながら、私の脳裏をそんな想いがかすめる。
浄瑠璃寺には、もう一体有名な秘仏の、吉祥天立像がある。ある本によれば日本で一番美しい仏像であるという。
室生寺は二人で歩くには、とても美しくて別世界を感じさせてくれるので、私は大好きなのですが、浄瑠璃寺もまた、別の世界を垣間見せてくれる、私の大好きなところです。
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吉祥天

by g-akasyoubin | 2011-05-21 20:46 | 古寺巡礼

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